近年、獣医療の進歩などにより犬や猫の寿命は伸びてきています。
それに伴い、犬も猫も腫瘍性疾患が死因のトップであります。
ひとことに腫瘍と言っても、発生部位、腫瘍の種類、悪性度などで治療法は大きく異なります。
<こんな症状ありませんか?>
- 皮膚や皮下にしこりがある
- 乳腺にしこりがある
- 喉や腋などのリンパ節が腫れている
- 高齢になって嘔吐や下痢が続いている
- くしゃみに混じって血が出る
- 血尿が出る
<こんな検査をします>
- 血液検査
- X線検査
- 超音波検査
- 細胞診検査
- 組織生検
<代表的な疾患>
「リンパ腫」
リンパ腫とはその名の通り「リンパの癌」のことです。
犬では発生部位によって、多中心型、縦隔型、消化器型、皮膚型などに分類されます。
猫のリンパ腫は猫白血病ウイルス(FeLV)の感染と密接な関係があり、縦隔型、多中心型、腎臓型、肝臓型、消化器型、鼻腔型などがあります。
また、低分化型や高分化型、T細胞型やB細胞型など様々なタイプがあり、タイプによって治療法や予後などが微妙に異なります。
⭐️必要な検査
- 血液検査
- X線検査
- 超音波検査
- 細胞診検査
- クローナリティ検査(遺伝子検査)
- リンパ節の切除生検、病理検査
⭐️治療法
化学療法(抗がん剤治療)が一般的
「乳腺腫瘍」
〈犬〉
犬の乳腺腫瘍は、中高齢の未避妊雌において最も一般的に認められる腫瘍です。一般的に良性腫瘍と悪性腫瘍の比率は1:1と言われています。また、発生には雌性ホルモンと強い関連性があり、2回目の発情までに避妊手術を実施することで発生率が著しく低下すると言われています。
一般的に治療の第一選択は外科手術ですが、中には強い炎症を伴うために手術が禁忌とされる炎症性乳癌というタイプも存在します。
〈猫〉
猫の乳腺腫瘍は3番目に多い腫瘍です。またそのうち80-90%は悪性であると言われています。そのため、多くの猫の乳腺腫瘍は急速に成長し、リンパ節や肺に転移します。
⭐️必要な検査
- 触診
- 血液検査
- X線検査
- 細胞診検査
- 病理組織学的検査
⭐️治療法
- 外科手術:部分切除、領域切除、片側全摘出、両側全摘出)
- 化学療法:外科手術を実施した上で行うケースが多い)
- 放射線治療
「肥満細胞腫」
肥満細胞腫は犬の皮膚腫瘍で最も発生率が高く、猫の皮膚腫瘍においても2番目に多い腫瘍です。
犬の肥満細胞腫の形態は様々で限局性から多発性、硬結した隆起病変から軟らかく境界不明な腫瘍まで多種多様です。
また、成長が遅いタイプや急速に増大し転移するタイプなど、その挙動も様々です。
猫の肥満細胞腫は主に皮膚(頭部)と内臓(脾臓や消化管)に発生することが多く、犬と異なり緩やかな経過をたどることが多いとされています。
⭐️必要な検査
- 細胞診検査
- 血液検査
- X線検査
- 超音波検査
- 病理組織学的検査
⭐️治療法
- 外科手術
- 放射線療法
- 化学療法
「眼球腫瘍」
犬と猫における眼球内の腫瘍にはメラノーマ(悪性黒色腫)や腺腫、腺癌などがあります。
犬のメラノーマは強膜や視神経から眼球外へ浸潤しなければ他臓器への転移はまれですが、猫では他臓器に転移しやすいと言われています。
また虹彩や毛様体の腺腫、腺癌においても全身への転移率は低いとされています。
その他に、多中心型リンパ腫の眼内転移などの二次性腫瘍であることもあるため、全身の精査が必要となります。
⭐️必要な検査
- スリットランプ検査
- 眼圧測定検査
- 超音波検査
- X線検査
- 血液検査
⭐️治療法
- 外科手術:腫瘍を含めた眼球の摘出
「膀胱腫瘍」
犬において膀胱に発生する腫瘍の50〜75%は膀胱移行上皮癌と言われています。
一般的に血尿や頻尿などの膀胱炎に類似した症状が認められますが、腫瘍により尿路系が閉塞してしまっている場合は二次的な腎不全が引き起こされます。
高齢の犬において持続的な血尿や頻尿が認められる場合は早めの検査が必要です。
⭐️必要な検査
- 超音波検査
- X線検査
- 尿検査
- 血液検査
- 組織生検(カテーテル吸引生検)
⭐️治療法
- 内科治療(COX阻害薬、化学療法)
- 外科手術